ガラスたちのおしゃべり : 株式会社十條 制作部/スタジオ グラシアムのスタッフブログ

2012年10月4日木曜日

旧作回顧3 イルフ童画館

スティップルです。



先週の土曜日、あんまり天気がいいもんだから、

信州の諏訪湖までドライブ。

そして、そのついでといってはなんだけど、

そのお隣、岡谷市にあるイルフ童画館へも寄ってきました。




というのは、今を遡ること14年前、1998年に、

この童画館のステンドグラスを制作したことがあり、

久々見てみたくなったんです。


イルフ童画館は、

岡谷市が誇る童話作家”武井武雄”の作品を常設展示した絵本の美術館です。

武井武雄は、童画という言葉を創出し、あらゆる表現手段を使い、

芸術の域にまで高めた偉大な作家なのです。




本当に彼の描く&作る作品はどれも、明治生まれの方とは思えないほど、

斬新で独創的、素晴らしいの一言です。



さてその14年前のステンドグラス。



武井武雄は、”仁四郎の窓”という絵本の中で、

ステンドグラスを模した絵本を描いています。

それはただ絵として描かれただけではなく、

ステンドグラスの鉛線を樹脂で立体的に盛り上げ、

リアルな表現を目指した、とてもオリジナリティあふれた作品です。



ということで、

その”仁四郎の窓”の絵本を原画に忠実にステンドグラスで再現し、

常設展示の目玉にしようというプロジェクトが、

岡谷市と大手広告代理店D通の間で具体化し、

ウチに制作依頼がありました。



僕自身、その当時”武井武雄”の名前を知らず、

当初はプロジェクトの重要性も認識していませんでしたが、

関わっていくにつけ、大変な仕事だぞということが

だんだんわかっていきました。



そんな彼の描く原画をそのままステンドグラスに置き換えるのは、

言うのは簡単、でも実際なかなか大変で、

特に水彩絵具で描かれた色を、

アンティーク系でなく、オパール系のガラスだけで表現する

(人工照明での展示のため)のは、ずいぶん難しい作業でした。





試作したパネルを市の担当者やD通に見せ、

原画と違和感がないか確認してもらったり、

スタジオでの制作ぶりを見学していただいたり・・・。

また、細部の表現をどうするかスタッフと打合せ&試行錯誤し、

数ヶ月後、大変なピース数にめげることなく全7枚がなんとか完成!







そうして完成したステンドグラスを納品へ。

納品した日は童画館の建物竣工の数日前、

たまたま視察のため岡谷市長がいらっしゃってて、

僕らが挨拶をすると、

もし良ければ施工前にここでステンドグラスを見せてください、

ということになりました。









梱包を解き、1Fのフロアで一枚一枚お見せすると、

岡谷市長は「・・・・・素晴らしい・・・・」

と深くうなずきながらながら一言。



ぼくらもそれまでの苦労が報われ、

ホッとすると同時に、嬉しい晴れ晴れとした気持ちになったことを

今でも覚えています。



14年ぶりにそんなことを思い出し、

そんなことあったなあ・・・と感慨に耽りながら、

イルフ童画館を後にしたのでした・・・。



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